開催レポート:9.26「核兵器廃絶のための国際デー記念シンポジウム」核軍縮の進めかた ―NPT、核兵器禁止条約を通じて

シンポジウム参加の皆さん

 9月23日、国連が定める「核兵器全面的廃絶のための国際デー」を記念して、核兵器廃絶日本NGO連絡会の主催、国連広報センターの共催、KNOW NUKES TOKYOの協力によるオンラインシンポジウムが開催されました(配信動画はこちら)。このシンポジウムは、市民社会、国連、政府の3者のパートナーシップによる取り組みとして2015年に開始されて以来、今回で8回目を数えます。

開会の挨拶を行う本間のどかさん

 シンポジウム開催に際し林芳正外務大臣からメッセージが寄せられ、冒頭、外務省の伊藤茂樹軍縮不拡散・科学部審議官が代読しました。メッセージの中で林外務大臣は、8月のNPTでは岸田総理が提唱した「ヒロシマ・アクション・プラン」を始め、採択こそされなかったものの、核軍縮についての我が国の考えが最終成果文書案に盛り込まれるなど、努力をし、成果をあげてきたことに言及。NPTの維持・強化こそが核軍縮に向けた唯一の現実的な取り組みであり、ニューヨークにおいて初めて首脳級で開催されたCTBTフレンズ会合で、CTBTの早期発効・検証体制の強化に向けてより一層貢献していくとの考えを示しました。さらに、来年のG7広島サミットでの議論などを通じて核兵器のない世界の実現に向け、現実的かつ実践的な取り組みを進めていくとし、そのためには、市民社会の協力が不可欠であると述べました。

根本侑加子さん

 続いて市民社会から、核兵器禁止条約第1回締約国会議および第10回NPT再検討会議に参加した学生からの報告がありました。締約国会議については徳田悠希さん(KNOW NUKES TOKYO、上智大学3年)、根本侑加子さん(核兵器廃絶日本NGO連絡会インターン、明治大学3年)が、会議の様子や成果、現地での動き、世界との繋がりについて述べました。

徳田悠希さん

徳田さんは、「会議の中で核抑止に対する批判が投げかけられたこと、世界中の若者が条約と向き合っていたこと、自身のアドボカシー内容が行動計画に盛り込まれたこと、オブザーバー参加国が前向きに関与していたことなど、目に見える成果がたくさんあった」と述べました。

浅野英男さん

 NPT再検討会議については、浅野英男さん(核兵器廃絶日本NGO連絡会事務局、ミドルベリー国際大学院1年)が、会議での成果や市民社会の取り組みなどを報告し、「採択こそされなかったものの、会議の最終文書案をみると、核兵器の非人道性・核戦争を繰り返さないという共通認識が盛り込まれていた」と指摘しました。また、問題提起として、核軍縮・核兵器の役割低減が停滞・後退している現状に言及し、今後の取り組みについては、ヒバクシャとの交流を含めた軍縮教育の推進やジェンダーの視点の重要性を挙げました。

高橋悠太さん

 続いて高橋悠太さん(KNOW NUKES TOKYO共同代表、慶應義塾大学4年)が、再検討会議での取り組みについて報告しました。高橋さんは、核兵器禁止条約についてNPTの最終文書案が「条約を認識するにとどまり、行動計画への言及は削除され、補完性についての言及はなかった」と指摘しました。また、自身の活動として、ユース共同声明を作成し、会議にNGOセッションにて代表としてスピーチしたことを報告。若い世代の核軍縮に対する声を届けたことを語りました。

和田征子さん

 最後に和田征子さん(日本原水爆被害者団体協議会事務局次長)が登壇しました。和田さんは、被爆者として、会場では原爆展を開催したこと、オープニングセレモニーでテープカットを行なったこと、各国大使へ被爆者としての想いを伝えたことなどを報告。「私たちは、核兵器は人類と共存できない絶対悪として、核保有国に廃絶を求めるとともに再びヒバクシャを作らない世界を市民社会とともに目指していく」と述べました。

根本かおるさん

 次に、中村桂子さん(長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA))をモデレーターに、パネリストとして、根本かおるさん(国連広報センター所長)、伊藤茂樹さん(外務省軍縮不拡散・科学部審議官)、高原孝夫さん(明治学院大学教授、国際政治学・平和研究)、和田征子さん、浅野英男さん、徳田悠希さんが登壇し、パネルディスカッションが行われました。

 まず、市民社会からの会議報告へのコメントと国連および外務省の取り組みについて根本さんと伊藤さんが発言しました。根本さんは、「私たちは核軍縮が実現不可能な夢物語であるという主張を拒絶します。これら死の道具を廃絶することは、実現可能であるだけでなく、必要である」という国際デーを記念するアントニオ・グテーレス事務総長のメッセージを紹介。根本さんは、若い世代からの報告にあった通り、被害者の数の裏には名前や暮らしがあり、具体的な命がある。これが非人道性を伝えていく時に、とても大切だと述べました。伊藤さんは、若者や被爆者の声を受け止めたうえで、日本政府として、核軍縮をめぐる各国の分断の中で、NPTの維持強化こそが、核兵器のない世界への唯一の道であると強調し、日本政府の意見も盛り込まれた最終文書案が採択されなかったことは遺憾であると述べました。今後の政府の取り組みについては、今年も国連に核廃絶決議案を提出し、国際賢人会議やG7を通じて核兵器のない世界に向けた取り組みを進めていきたいと述べました。

高原孝生さん

 市民社会、国連、外務省からの発言を受けて、中村さんが、NPT・核兵器禁止条約の2つの条約をどのように捉え、前進させていくべきかという問題提起をしました。高原さんは、問いを考えるうえでの前提として、各条約について解説。その上で、政府はNPTこそ核軍縮への唯一の道と主張するがその限界が現れてきていると述べ、NPTを核軍縮のベースと捉えるのは現実的であるが、唯一の道ではないと指摘しました。さらに、非保有国は、これに効力を持たせるために核兵器禁止条約6条の核軍縮義務と結びつけ、保有国に対し、誠実に軍縮交渉を進めさせる必要性を感じていると述べ、市民社会は、NPTと異なって核抑止を否定する核兵器禁止条約を強調していくと述べました。

伊藤茂樹さん

 根本さんは、最終文書案の内容が採択まであと一歩だったことは評価できるとし、核兵器廃絶に向けた道筋は1つではないと指摘。現今の危機を、核軍縮の必要性に関する一般の理解を広げ、制度を整える機運 に変えていくこともできると述べました。徳田さんは2つの条約の補完性について、核兵器禁止条約は、被害者援助に対して、科学諮問グループや国際信託基金の設立など、具体的なプランを示しており、NPTではできなかった役割を果たすことができると述べました。浅野さんは、核兵器の非人道性の認識を普及する点では共通点がある。被害者支援・環境修復については、NPTの最終文書案でも言及されていた。ジェンダー・教育についても踏み込んだ内容が盛り込まれていた。2つの条約が協力しあえる部分はあると指摘しました。

中村桂子さん

 伊藤さんは、核兵器禁止条約は、核兵器のない世界の出口となりうる重要な条約であるが、核保有国が参加していないことから、非核保有国と核保有国のどちらも参加しているNPTの重要性を強調しました。非人道性については、その認識を普及させるために広島・長崎の(被爆の)実相を伝えていく取り組みを続けていくと述べました。高原さんは、核兵器禁止条約に核保有国が参加していないのはある意味当たり前である。核兵器の問題は全世界が当事者であり、日本政府は核廃絶の先頭に立ってほしいと要望。 CTBTを日本が牽引していくことについてはぜひ進めてほしいと述べ、核兵器は非人道的であり、初めから使用してはいけないものだという認識を普及させることが重要だと述べました。

 次に、中村さんは、課題の大きい時代であるからこそ、市民社会の役割が重要になる。今後の課題と取り組みについて話をしたいと問題提起しました。

パネルディスカッションの様子

 浅野さんは、2つの会議を通じて国際社会における市民社会の重要性を強く感じたとし、そこに関与していく市民社会の側も国際社会の抱える課題について学び、探求する姿勢が求められると述べました。また、核兵器の非人道性を伝えていくことは、尽きない課題であると述べました。徳田さんは、市民だからこそ持ち得る知見があることを伝え、被爆の実相を反映させることはまだまだできると述べました。

 市民社会に対し政府から何か注文や意見などはありますかという中村さんからの問い掛けに対し、伊藤さんは被爆の実相を伝えていく点では、ユース非核特使や、世界のユース・リーダーを被爆地へ迎えるなど、今後も交流・協力していきたいと述べました。根本さんは、被爆者の方の想いを伝え、若者がそれを受け継いでいく姿勢を世界中に広めてほしいと述べました。

大久保賢一さん

 閉会の挨拶に立った大久保賢一さん(核兵器廃絶日本NGO連絡会共同代表・日本反核法律家協会会長)は「核兵器のいかなる使用も壊滅的な人道上の影響をもたらす。核兵器の廃絶こそが唯一の抜本的解決である」と述べました。

 最後に、総合司会を務めた本間のどかさん(明治学院大学2年、KNOW NUKES TOKYO)は、こうしたシンポジウムを通して、政府と市民社会との間で核兵器を取り巻く現状を把握し、問題意識を共有することは必要不可欠だと考えているとし、引き続き共に歩みを進めていきたいと述べ、イベントを閉会しました。

根本侑加子(核兵器廃絶日本NGO連絡会インターン、明治大学3年)


本イベントの様子は、以下のメディアで取り上げられました。

NHK「今後の核軍縮の在り方について被爆者や外務省担当者らが議論」(2022年9月23日)

朝日新聞「大学生や被爆者、外務省担当者ら核軍縮を議論 廃絶国際デー」(2022年9月28日)

しんぶん赤旗「核兵器廃絶への課題は 国連・政府・市民社会が議論 国際廃絶デー記念シンポ」(2022年9月26日)


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