事前解説①:核兵器禁止条約(TPNW)第1回締約国会合の注目点

 6月21日より3日間にわたりウィーンで行われる核兵器禁止条約第1回締約国会議に先立ち、事前の解説記事を掲載します。第1回目は、明治大学法学部の小倉康久さんによる「核兵器禁止条約(TPNW)第1回締約国会合の注目点」です。

【締約国会合とその目的】
 核兵器禁止条約第1回締約国会合が、6月21日~23日にウィーンで開催されます。本来は、2021年1月22日のTPNW発効から1年後の本年1月に開催が予定されていましたが、新型コロナウィルスの感染拡大により3月に延期され、さらに延期されていました。
 TPNWは、条約発効後、1年以内に締約国会合を開催すること、さらにその後は2年毎に開催すると規定しています(8条2項)。その他、締約国の1/3以上の要請がある場合には、特別会合が開催されます(8条3項)。
 また、締約国会合とは別に、条約発効から5年以降に「この条約の運用及びこの条約の目的の達成についての進捗状況を検討するための会議を招集する」こと、さらにその後は6年毎に開催すると規定しています(8条4項)。
 締約国会合の目的についてTPNWは次のように3項目を規定しています。

8条1項
 締約国は、この条約の関連規定に従って、この条約の適用又は実施に関する次の事項を含む問題について検討するため及び必要な場合には決定を行うため、並びに核軍備の縮小のために更にとるべき措置に関し、定期的に会合する。

(a) この条約の実施及び締結状況
(b) 核兵器計画の検証された、期限が定められた、かつ、不可逆的な廃止のための措置(この条約の追加的な議定書を含む。)
(c) この条約の規定に基づくその他の事項及びこの条約の規定に合致するその他の事項

【第1回締約国会合のアジェンダ】
 5月18日に、暫定的ですが今回の締約国会合のアジェンダ(TPNW/MSP/2022/1)が発表されました。そのうち実質的なものは次の通りです(アジェンダは手続き的なものも含め16まであります)。

アジェンダ11
 条約の締結状況および運用並びに条約の趣旨及び目的を達成するために重要な以下に挙げるその他の諸問題の検討。

(a)核兵器の所有、占有又は管理の申告(2条)
(b)普遍性(12条)
(c)核兵器及びその他の核爆発装置の運用状態からの撤去及び廃棄並びに自国の領域からの撤去の期限(4条)
(d)検証を含む権限のある国際的な当局(4条)
(e)被害者に対する援助、環境の修復並びに国際的な協力及び援助(6条、7条)
(f)国内の実施措置(5条)
(g)次の事項を含む条約の趣旨および目的の達成にとって重要なその他の問題

 ⅰ. 条約の効果的な実施のための科学的及び技術的アドバイスの制度化
ⅱ. 条約の実施のための会期間の構造
ⅲ. 条約と既存の核軍縮及び不拡散体制との補完性 

【注目点】
 今回の締約国会合の注目点を、3点指摘します。

①オブザーバー参加国の数
 TPNWの目的を達成し、核兵器廃絶を実現するためには、TPNWの締約国を増やすこと(普遍化)が必要となります。TPNW8条1項(a)やアジェンダ11が予定しているように、条約の締結状況は最大の注目点となります。
 TPNWは、非締約国に対しても締約国会合にオブザーバーとして出席するよう招請することを規定しています(8条5項)。もちろん、すべてのオブザーバー参加国に、この条約の締約国となる意思があるとまでは言えませんが、この条約の存在を一応認めるものであり、署名・批准の第一歩と見なすことはできます。つまり、オブザーバー参加国の数は、TPNWの普遍化に関連していきます。締約国とオブザーバー参加国の総数が国際社会(国連加盟国は193カ国)の過半数を超えられるかどうかが、判断基準になると考えます。

②オブザーバー参加・不参加の理由
 すでに日本国内でも締約国会合へのオブザーバー参加問題が報道されているように、非締約国の政府はオブザーバーとして出席するよう招請を受けていることから参加・不参加の理由を明らかにすることが求められることになります。その理由は、TPNWそのものだけでなく核兵器廃絶に対する政府の見解を再確認する重要なものであり、選挙における投票先の判断材料にもなります。
 また、北大西洋条約機構(NATO)に加盟し、アメリカの拡大核抑止(核の傘)の提供を受けているドイツノルウェーはオブザーバー参加の意向を表明していることから、これらの国の動向は特に注目すべきです。

③核不拡散条約(NPT)再検討会議への影響
 現在、核兵器保有国も参加する最も普遍的な核兵器廃絶の枠組みは、NPTです。締約国会合の直後の8月には、5年毎に行われるNPT再検討会議が予定されています(本来は、2020年4月に予定されていましたが、新型コロナウイルスの感染拡大により延期されていました)。2022年5月現在、TPNW締約国は61カ国であり、NPT締約国の約1/3となっています。TPNWは、核兵器の使用・保有等を全面的に禁止するというものです。そのような法規範を共有するTPNWの締約国がグループを形成し、まとまって行動した場合、NPT再検討会議や核兵器保有国に大きなインパクトを与えられると考えます。そのための何らかの取り組みやアイデアが、今回の締約国会合で合意されるかどうかも、注目すべき点です。

文責:小倉康久(明治大学法学部)

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