NGO News

2022年03月03日

政治指導者の無責任な「核共有」論に抗議します

核兵器廃絶日本NGO連絡会は本日、以下の声明を発表しました。

ロシアが、ウクライナへの軍事侵攻を2月24日に開始しました。多くの一般市民が被害を受け苦しんでいます。避難民も大量に発生しています。ロシアの行為は、国連憲章への明確な違反です。私たちは、ロシアの軍事行動の即時中止を求めます。あろうことかプーチン大統領は、自国が核兵器の保有国であることに言及し、2月27日には核抑止部隊を高度の警戒態勢に置きました。これはロシアによる核兵器の使用の威嚇といえる行為であり、私たちは強く抗議します。

核兵器の使用の恐怖に世界が直面するその最中に、日本では安倍元首相が2月27日、日本の「核共有(ニュークリア・シェアリング)」について、議論をすべきだと発言しました。これを契機に、国会議員の中から議論を求める声が上がっています。岸田首相は「非核三原則堅持という我が国の立場」と「原子力基本法をはじめとする国内法体系」から「核共有は認めない」と、明確に否定しました。岸田首相の答弁は極めて当然です。議論を呼びかける名目で、国是である「非核三原則」を揺るがそうとする動きは容認できません。

現下の事態は、安全保障のための核兵器という「核抑止論」の矛盾を浮き彫りにしています。核抑止は、大変に危険なばかりか脆弱で破れやすいものです。今まさに、そのことが明らかになっています。抑止が破綻し核兵器が使用されれば、引き起こされる事態がどのようなものであるかは、広島と長崎の経験から明らかです。政治指導者が誤った判断をした時に、そうした事態が生じます。もたらされるのは、市民の命が奪われ、苦しむ事態です。安全が保障されるのではなく、安全が脅かされる事態です。どの国の市民がそのような事態を望むのでしょうか。そうした事態を引き起こした政治指導者は、一体どのように責任を取るというのでしょうか。

戦争被爆国である日本には、核兵器のない世界に向けて努力する責任もあります。核兵器への依存を深める「核共有」は、日本の責任を忘れた無責任な政策です。危機的な事態に直面する市民の恐怖と動揺を利用して議論を進めようとすることは、道義的にも許されません。日本が「核共有」という行動に出れば、周辺国も反応し、軍拡のエスカレーションが生じかねません。

武力の強化で自らを守るとする論理は、核兵器の時代には極めて危険なものです。核兵器は決して使用されてはならず、使用されないための唯一の保障は「廃絶」以外にありません。安全保障の「現実について議論する」と主張する人々の思考は、武力への依存に偏重しています。そうした偏重を是正するために、どのような知恵と論理を議論に持ち込むことができるのか。この現実的な課題が、政治指導者と市民に問われています。日本は、核兵器の使用と威嚇をさせないために率先して行動をすべきです。そして、いま議論すべきは、核兵器禁止条約への参加と核兵器によらない安全保障の実現です。

「ノーモア・ヒロシマ、ノーモア・ナガサキ、ノーモア・ウォー」を訴える被爆者と核兵器の廃絶を求める市民の声が、今ほど大切な時はありません。戦争で苦しむのは市民です。核兵器の使用により苦しむのも市民です。だから私たちは、戦争と核兵器の使用に絶対に反対します。

2022年3月3日

核兵器廃絶日本NGO連絡会
共同代表
足立修一(核兵器廃絶をめざすヒロシマの会代表)
伊藤和子(ヒューマンライツ・ナウ事務局長)
大久保賢一(日本反核法律家協会会長)
川崎哲(ピースボート共同代表、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)国際運営委員)
田中煕巳(日本原水爆被害者団体協議会代表委員)
朝長万左男(核兵器廃絶地球市民長崎集会実行委員長)

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