【2020年NPT再検討会議・第2回準備委員会⑦】クラスター2の議論がはじまりました

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会場から望むレマン湖とモンブラン

27日(金)午前の部はクラスター1に関する国家代表からの声明リクエストがこれ以上なく、予定より半日早まってクラスター2の議論がはじまりました。クラスター2では核兵器の不拡散、保障措置、非核兵器地帯に関する条項について話し合われました。

この会議中に、南北朝鮮首脳会談の友好的な様子を示す数多くの写真と、共同声明のニュースが飛び込んできました。私は平素、朝鮮半島問題をもっぱら米朝関係、日朝関係の文脈でとらえており、南北関係をあまり意識しておりませんでした。しかし、38度線にある軍事境界線の緊張が5月1日をもって解ける方向に向かうというのは歴史的な素晴らしい出来事です。ただし、各国の核廃絶NGOの仲間たちからは、軍事的緊張が朝鮮半島からイランやシリアといった他の地域に移るだけならば核問題の真の解決にはならないとの意見が聞かれました。

奇しくも同日27日にトランプ米大統領とメルケル独首相がワシントンD.C.で会談し、メルケル首相はこれまでの態度を変えてイラン核合意(包括的共同作業計画:JCPOA)は不十分であると述べたと報道されています。交渉は5月12日まで続けられ、その後トランプ大統領がJCPOAを破棄するかどうか判断されます。もしも破棄されれば、米朝首脳会談を通じた朝鮮半島問題への悪影響は必至です。この意見はロシア、ブラジルから聞かれました。オランダ、ブラジルからはIAEAがイランのJCPOA遵守を確認しているとJCPOAを援護する発言もありました。

ロシアの発言内容

ブラジルの発言内容

オランダの発言内容

多く国の代表から、核実験、弾道ミサイル実験を続ける朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)を不拡散の悪例として非難する一方、最近の南北・米朝首脳会談、核実験・大陸間弾道ミサイル(ICBM)実験の停止、核実験場の破棄などのニュースは歓迎するとの発言がありました。ただし、北朝鮮は国連安保理決議を遵守し、核軍縮のための実際的な作業が実施され、CTBT、NPTに復帰し、IAEA保証措置を受けること、と釘を刺すのを忘れないのは冷静な態度です。これに関連し中国から、朝鮮半島の非核化と平和機構の設立は同時に進めるべきであるという「複線アプローチ」の提案がありました。

中国の発言内容

どのような手段がクラスター2の目的を実現するのに有効か、多く国の代表から出ていた意見を整理しておきます。IAEA保証措置と追加議定書批准、CTBT批准、FMCT締結、原子力供給グループ(NSG)による輸出管理、既存の非核兵器地帯設立の経験、などです。我々市民社会を勇気づけるものとしては、フィリピンから効果的な不拡散体制の実現のために産業界、学術界、市民社会が重要な貢献をしているとの発言がありました。

フィリピンの発言内容

この日も最後に「返答の権利」がシリアから行使され、保証措置を遵守していないとするEU・ドイツ・オーストラリアに対し、2017年のIAEA報告でシリアのIAEAへの協力が確認されていると発言しました。続けてイスラエルが国際法や国連憲章に違反する行為を行い、NPTにも化学兵器禁止条約にも生物兵器禁止条約にも批准していないと非難しましたが、相手となるイスラエルが不在のため、それ以上の非難合戦とはなりませんでした。月・火・木曜日に目撃した何ら建設的な結果を生まない非難合戦を聞いていると、日本政府が主導する賢人会議提案の「議論に礼節を取り戻す」や「傾聴」のことが思い起こされます。28日(土)に、所属している国際核廃絶ネットワークAbolition2000の年次総会に出席しました。そこでスイスの「平和的非暴力的コミュニケーション推進協会」の方から「対立マネジメントの訓練」の説明書を受け取りました。その中身はもう少し勉強する必要があります。以前読んだ、アパルトヘイト廃止後の南アフリカで対話ファシリテーションを行ったアダム・カヘン氏の著書のことも思い出します。26日分のブログで提起した問題意識と同じで、現状のNPT会議の運営方法を見る限り難しいとお断りしたうえで、核軍縮進展のためにはこうしたコミニュケーション方法こそ取り入れるべきではないかと強く思います。

午後はいくつかの国家からクラスター2の議論を続けるのではなく、国家間の協議に使いたいというリクエストが通り、休会となりました。おかげで出られないことを残念に思っていたナガサキユース代表団のサイドイベント「ユースプレゼンツ:全人類への記憶の継承」に出席して、メンバーの核廃絶への思いを知ることができ、有意義でした。

プレゼンでは、まずナガサキユース代表団の英語がとても上手なことに驚きました。そして、それぞれがどのように自分が核兵器とつながっているかを自分の言葉で語っていました。それぞれバックグラウンドは異なりますが、被爆都市長崎で生まれ、育ち、学ぶ学生が今を生きる自分がなぜ核兵器廃絶を目指すのかとてもわかりやすいプレゼンでした。

24日(火)夕方に同じナガサキユースが短い映像を見せるサイドイベントがありました。その中でインタビューされていた学生の一人が核兵器の問題は私の力ではどうしようもならないと言っていたのが印象的でした。私も昔はそう考えていた時もあり、それが世界の大多数の意見かもしれません。問題から目を背けるのではなく、しっかりと見つめて考えること、それは決して若い人だけの課題ではありませんが、若いときにその習慣が身につくことはとても重要だと考えていますので、応援しています。

月曜日の午前にクラスター2の議論が再開されます。

 

文責:山口大輔(ピースデポ)

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【2020年NPT再検討会議・第2回準備委員会⑥】クラスター1の議論がはじまりました

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正門から国連ヨーロッパ本部を望む

4月25日(木)午後からは、一般討論およびNGOプレゼンテーションを終え、具体的な議論がはじまりました。クラスター1では、具体的には核兵器の不拡散・軍縮・国際平和と安全保障に関する条約の条項、安全の保証、非核兵器国に対する核兵器の使用や使用の威嚇への保証のための効果的な国際的枠組みについて話し合われました。

核軍縮の進展を生み出せる新味のある提案がないか注意深く聞いていましたが、違いを見つけることはできませんでした。しかし、以前からある提案の重要性が減じるわけではありませんので、どういった提案が多くの国から出されたかご紹介します。警戒態勢解除、信頼醸成、検証、透明性向上、リスク低減、消極的安全保障、非核兵器地帯、核兵器禁止条約(TPNW)、兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)、包括的核実験禁止条約(CTBT)、戦略兵器削減条約(新START)、2000年、2010年NPT最終文書の行動計画などです。パナマが軍縮教育の重要性について述べていたことを特記しておきます。

そして、やはり核兵器国の動向は気になるところです。英国、ロシアはあえて多弁にならずに、我々はNPT第6条の核軍縮義務を果たしている、と淡々と述べている印象でした。多弁だったのが中国です。安全保障ドクトリンにおける核兵器の役割を減らすこと、先行使用を前提とする核抑止政策をやめ先行不使用政策をとること、NPT第6条は無期限核兵器保有を認めるものではない、核の傘、ヨーロッパにおける核シェアリングをやめることなどを訴えていました。5核兵器国は24日(火)の朝に会合を持ったことを明かしており、中国がリーダーシップを取って、というのは現実的には難しいでしょうが、仲介役としてでも自身の主張を他の核兵器国にも浸透させてほしいと思います。

英国の発言内容

ロシアの発言内容

中国の発言内容

クラスター1の特定事項に移る前に、声明に対する「返答の権利」が行使され、米国が新NPRに小型核兵器の開発を盛り込んだことでNPT第6条の核軍縮義務を守っていないとするイランと、遵守しているとする米国の間で激しい応酬が繰り広げられました。初日の最後と2日目の最後(3日目の午後はサイドイベントに出ていたため全体会のやり取りは不明)にもシリアでの化学兵器使用問題、イギリスでの元ロシアスパイ暗殺事件、クリミア併合などが提起され、米国、英国、ロシア、シリアの間で責任は相手にあるとする激しい非難合戦が行われました。ロシアはNPTの場はそれらの問題を話し合う場ではないとし、米国は(化学兵器の)不拡散の規範が害されているのだから提起せざるを得ないと言います。確かにこの非難合戦で時間を浪費して本来話し合われるべき重要な問題が話し合われないのでは困りますが、肝心の核軍縮の議論のほうが全くかみ合っていません。その根底には相互の不信感があります。これら問題を包括的に取り扱う場を別に設けて信頼を高め、共通の基盤を構築してからでないと核軍縮の話し合いは進展しないように思われました。

その後、午後の部の途中からクラスター1の特定事項(核軍縮と安全保障)に議論が移りました。非核兵器国の側から、非核兵器地帯に属している国でさえも核兵器国が議定書に署名していないケースがほとんどであるため、(核兵器で攻撃しないという)消極的安全保障を核兵器国の政策ではなく法的拘束力のある形で認めてほしいという声が一様に聞かれました。カザフスタンはこの交渉開始の機は熟していると述べています。双方失うものはないように見えるため、この点だけでも進展を見てほしいものです。

カザフスタンの発言内容

クラスター1の特定事項に関する声明は26日で出尽くしました。明日27日はこれ以上クラスター1の声明の提出がなければ予定より半日早まってクラスター2の議論が行われるようです。27日の議論も引き続き報告します。

 

文責:山口大輔(ピースデポ)

【2020年NPT再検討会議・第2回準備委員会⑤】米国政府主催のサイドイベントが行われました

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会議が行われている国連ヨーロッパ本部

4月25日(水)午後1時15分から、米国主催によるサイドイベント「米国の核態勢の見直し(NPR)」が国連ヨーロッパ本部のルーム25で行われました。

ここでは、国務省のクリストファー・フォード核不拡散特別代表、アニータ・フリート次官補が登壇し、国防総省のロバート・スーファー次官補代理、グレゴリー・ウィーバー空軍戦略計画兼政策担当副局長がテレビ電話で参加しました。

フリート次官補は不拡散と軍備管理に関し、米国が悪化する安全保障環境下にあることを指摘。そうした状況下では、抑止の信頼性を示し、もし必要があれば、潜在的な敵の脅威に核兵器で反撃する用意があるという意図を示さなければならないと述べました。

さらに米国は、不拡散・軍備管理に強くコミットする。包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准を追求することはないが、CTBT準備委員会(CTBTO)に対する支援は継続する。米国は、NPT第6条の軍縮誠実交渉義務や効果的措置を含め、NPTの全ての義務にコミットしてきた。米国が長年、NPT第6条の核軍縮義務にコミットしてきたことは明らかだ。

核兵器禁止条約(TPNW)に関しては、安全保障の現実を無視するものである。核兵器を持つ責任ある民主主義国家や、その拡大核抑止のもとにある国に対し圧力をかける一方、独裁的国家の行動に何ら影響を与えない。核兵器を持つ国は、同条約に署名することはない。同条約により、世界から1発の核兵器も減ることはない。軍縮の動きを分断化し、軍縮の可能性を低下させる恐れすらある。このように述べて、TPNWに対し大変に厳しい見方を示しました。

フォード特別代表は、今回のNPRは、米国の伝統的な核戦略と大きくかけ離れたものではないと述べました。そして、①核戦略の構造的な面で革新的なものがあるわけではない、②核の近代化と核抑止の信頼性へのコミットメントに重きを置いている、③変化する安全保障環境に適応していく姿勢を示している、④核戦略に関する透明性を通じて他の核兵器保有国にもそれを促していることを挙げて、これらの4点は米国がこれまで「継続」してきたものだと指摘しました。

質疑応答も活発に行われました。その中で、米国はNPT第6条の核軍縮義務にコミットしてきたとの説明があったが、NPRの文中にはNPT第6条に言及していないのではないかとの指摘がありました。フォード特別代表は、NPRには核不拡散に関する記述があると応じました。

また、別の問いに対する答えの文脈で、NPRの冒頭のパラグラフにあるように、「長期的な目標としての核兵器の廃絶」にもコミットしていると述べました。

米国は、核兵器の非人道性はどのように考えているのかという問いに対しては、非人道性イニシアティブは、米国の安全保障上の懸念や現実に耳を傾けてこなかったといったコメントがありました。

なお、米国はこのサイドイベントに関して、「米国は、責任ある核兵器国がどのように行動すべきかの基準を引き続き設定している」とツイートしました。(原文はこちら

全米科学者連盟のハンス・クリステンセン氏はこれに関連し、「NPRの勧告に対し批判的な立場をとってきた者として、NPT再検討会議の準備委員会で市民社会と直接に意見交換することを米国が決めたことは、素晴らしいことだ。全ての答えを得たわけではないが、他の核保有国もこうした姿に続くべきだ」とツイートしていました。(原文はこちら

ちょうどこの原稿を仕上げている最中、核軍縮に関するクラスター1で、米国の声明が読み上げられました。2018年のNPRは核兵器の役割を拡大してはいないという一節が、耳に飛び込んで来ることになりました。(声明の原文はこちら

文責:河合公明(創価学会平和委員会事務局長)

 

【2020年NPT再検討会議・第2回準備委員会④】NGOプレゼンテーションが行われました

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発言する被爆者の児玉三智子さん

4月25日(水)午前10時から、市民社会に発言の機会が与えられました(NGOプレゼンテーション)。ここでは、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)、被爆者の代表、核兵器廃絶国際医師会議(IPPNW)、アボリション2000、反核国際法律家協会(IALANA)、平和首長会議など18の市民社会団体が登壇しました。

ICANは、前進へのプラットフォームを提供できるのは、対話と軍縮である。核兵器は、大きな不安の源泉にしかなり得ない。非人道的で違法な核兵器は、誰の手にも正しく保有されることはない。核兵器禁止条約は、核軍縮をめぐる国際法の最も大きなギャップを埋めるとともに、核兵器が戦争の合法的な兵器であるという考えを力強く批判した上で、「この新しい国際的な法的基準」への署名と批准を訴えました。(ICANの発言内容はこちら

日本原水爆被害者団体協議会からは、被爆者である児玉三智子さんが登壇。広島で、7歳の時に被爆した際の壮絶な光景を、「この世の地獄」として語り、その後次々と家族を失い、世間の偏見と戦ってきた体験、そして、「73年経った今も、あの日が消えることはない」との思いを訴えました。そして、核兵器禁止条約として結実したヒバクシャの叫びに、唯一の戦争被爆国である日本が賛成しないことへの怒りと、核兵器廃絶への決意を語りました。(被団協の発言内容はこちら

その他、日本からは、原水爆禁止日本協議会の土田弥生事務局次長、ピースデポの山口大輔研究員、平和首長会議からは松井一実広島市長、田上富久長崎市長が登壇。また日本に本部を置く創価学会インタナショナル(SGI)のヘイリー・ラムゼイ=ジョーンズさんは、「核兵器を憂慮する宗教コミュニティ」(20団体・個人)を代表して、共同声明を発表しました。(ピースデポの発言内容はこちら、核兵器を憂慮する宗教コミュニティの発言内容はこちら

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発言するSGIのヘイリー・ラムゼイ=ジョーンズさん

文責:河合公明(創価学会平和委員会事務局長)

【2020年NPT再検討会議・第2回準備委員会③】日本政府主催のサイドイベントが行われました

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24日午後、日本政府主催のサイドイベントが、国連ヨーロッパ本部の大会議場で行われました。このサイドイベントでは、今年3月に「核軍縮の実質的な進展のための賢人会議」が日本政府に提出した提言(日本語は概要)をアダム・ブガイスキー議長に提出するとともに、その内容についての議論が行われました。

このイベントには、日本政府から河野太郎外務大臣、高見澤將林軍縮会議日本代表部大使が出席。河野外務大臣は、賢人会議の取りまとめた勧告の趣旨を説明し、ブガイスキー議長に提出しました。同議長は、この勧告は時宜を得たものであり、その内容を議長サマリーに反映出来るよう努力したいと述べました。(外務省ウェブサイト

引き続き行われたパネルディスカッションには、元国際原子力機関検証安全保障政策課長のタリク・ラウフ博士、ジェームズ・マーティン不拡散研究センター所長のビル・ポッター博士、駐ジュネーブ・オーストラリア代表部のバネッサ・ウッド参事官が登壇。一橋大学の秋山信将教授が司会を務めました。

ラウフ博士は、賢人会議の提言が、①現下の問題に関連させ焦点を絞る、②簡潔である、③既存の提言と重複しないよう努める、④「困難な問題」(hard questions)を扱うという方針でまとめられていると述べた上で、その概要を紹介しました。

ラウフ博士はまず、核軍縮・不拡散体制を維持するための前提として、①73年の不使用の実行に裏打ちされた「核不使用の規範」は,あらゆる手段で維持されなければならない。②NPTは「核兵器のない世界」という共通の目標の前進に向け引き続き中心的な存在である、との2点を指摘。その上で提言が、橋渡しの取り組みとして、①NPT運用検討プロセスの実施の強化、②橋渡しの基盤としての信頼醸成措置、③異なるアプローチを収斂するための基盤作りについて述べていることを紹介しました。

これに対しポッター博士からは、核軍縮を巡り厳しい対立が起きている状況下、議論に礼節を取り戻すという指摘は最も共感できる。今後は、核使用のリスクを減らすための一歩踏み込んだ議論を期待したい。米露が関係が悪化して負のスパイラルが起きている中では、両国の定期的な協議が大切だ。日本が長年訴えてきた軍縮・不拡散教育について、今後の議論では明示的に扱ってほしい等とコメントしました。

ウッド参事官は、この提言が安全保障と軍縮の関係という困難な問題を扱っていることに感謝したい。どうすれば共通項を見つけられるのか。違いがあっても尊重しあって議論できることが重要だと述べつつ、提言が、コンプライアンスや検証、透明性といった点に光を当てていることを評価しました。

引き続いて秋山教授は、①安全保障と軍縮という困難な問題を扱うに適切なフォーラムとはどのようなものか、②安全保障を強化する軍縮は可能か、③現在の国際環境下で、核セキュリティプロセスにおいて各国が自発的に出来ることは何か、という3つの問いをパネリストに投げかけました。

ポッター博士は、異なる立場に立つ個人からなる集まりだが、率直でインフォーマルな環境が重要であると指摘。そうした議論の中から大きなアイディアも生まれてくる。テーマや地域に基づいたグループの役割が重要だと述べました。

ウッド参事官は、女性が軍縮の議論に果たす役割を指摘し、礼節を取り戻すためにも議論する人の多様性が必要であり、その意味でジェンダーの多様性が重要だと述べました。リスクの削減については、まだ十分に議論ができていない。困難な問題をどう扱うかについては、今、何が出来るかに焦点を当てて議論することが大切だ。また様々なフォーラムを活用して議論することの重要性も指摘しました。

ラウフ博士は、困難な問題を議論する場として論理的に最もふさわしいのはNPTの再検討プロセスであるが、先の2回のサイクルではそれがうまく機能していない。核兵器国の技術的専門家も巻き込んだ議論が必要である。今日では国民国家の力が弱まり、安全保障に対する考え方も変化している。人間の安全保障といった考え方が生まれている今日、「すべての人々にとって減弱されない安全保障」といった形で安全保障の概念も考えられるべき等とコメントしました。

フロアとの質疑応答も活発に行われました。筆者にも質問の機会があり、「73年の不使用の実行に裏打ちされた『核不使用の規範』は、あらゆる手段で維持されなければならない」(4項)と提言にあるが、「規範」とは何を意味しているのかについて質問しました。具体的には、国際法のような法規範を指すのか、あるいはそれ以外の規範を指すのかという意味です。

この点に関しては、2014年の軍縮・不拡散イニシアティブ(NPDI)による広島宣言には「約69年に及ぶ核兵器不使用の記録が永久に続けられるのはすべての国々にとって利益である」(25項)との一節があり、「核兵器不使用の記録」(record)という表現が使われています。

ラウフ博士は、その点については深い議論は行われていない。ただ賢人会議のメンバーには、不使用は単なる「記録」以上のもので、NPT締約国であるかどうかを問わず、核兵器は使われてはならないという明確な理解があったと思うと述べました。

慣習国際法の成立要件は、国家実行と法的確信ですが、「記録」以上のものということだとすると、国家実行を認めた上で、その様な法規範が存在していること(法的確信)の可能性も排除しないということなのか。今後の議論に手がかりを与えるように思えます。

秋山教授は、私たちの前には2つの現実がある。核に依存しなれければならないという現実と、核兵器禁止条約という現実だ。これら二つの異なる現実をどのように収束させるのかが今、問われていると述べました。さらにまとめとして、賢人会議の提言はすべての問いに答えているものではなく、さらに議論を続けていかなければならないと述べました。

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発言する筆者

文責:河合公明(創価学会平和委員会事務局長)

【2020年NPT再検討会議・第2回準備委員会②】第2回準備委員会が開幕しました

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4月23日、第2回準備委員会がジュネーブの国連ヨーロッパ本部で開幕しました。すでに各国が作業文書を提出し始めており、それぞれの立場が明らかになっています。ここでは第1日目の一般討論の内容も踏まえつつ、筆者からみた今回の準備委員会の注目点を紹介しておきたいと思います。

(1)まず、本ブログ読者の多くが関心を寄せているであろう核兵器禁止条約(TPNW)ですが、これを2020年NPT再検討会議の最終文書のなかでどのように位置づけるかです。すでにオーストリアなど22カ国が作業文書9を提出し、最終文書に盛り込む具体的内容を提案しています。例えば、核兵器のもたらす「人道上の帰結についての知見と証拠が事実に基づく議論で提起されたことを歓迎」し、「核兵器爆発の影響が、従来理解されていたよりも重大で、相互関連しており、地域的・地球的影響を及ぼし、人類の生存を脅かしうることを認識する」こと。そして核兵器のもたらす「人道上の帰結への落胆を表明し、国際法遵守の必要を再確認」すること。そのうえでこの「人道上の帰結の新証拠により、核兵器は国際法に合致して使用できないとの見方が強化されたことの承認」や、TPNWは「NPT第6条でいう効果的措置であるという事実の承認」を求めています(12項の趣旨)。単純にTPNWを認めよというよりも、TPNWの前提となっている考え方を受け入れたうえで、TPNWはNPT第6条でいう「効果的措置」に該当することの承認を求めていると言えます。新アジェンダ連合(NAC)もすべてこの作業文書の共同提出国になっていますが、NACのNPT第6条についての作業文書13では、1995年、2000年および2010年の最終文書は、第6条の核軍縮義務実施し締約国が必要と認めたものであり、締約国はその実施に完全に責任があると主張しています(10項、11項)。TPNWの推進はNPT第6条の履行にあたるという主張が明確に見えてきています。

(2)これに対して核兵器国(NWS)、とりわけ米国は作業文書30を提出し、新しい核軍縮のアプローチである「核軍縮条件創出アプローチ」(CCND:creating the conditions for nuclear disarmament)を提示しました。核軍縮に取り組むには前提となる国際安全保障環境の改善が必要であり、NPTのすべての締約国がこれに取り組む責任があるというものです。米国は、NPT前文で、締約国は核軍縮の促進のために「国際間の緊張の緩和及び諸国間の信頼の強化を促進することを希望している」と指摘し、国家間緊張の緩和こそ、NPT第6条に従って核軍縮の条件を育てるために必要だと指摘しています(8項)。実際、初日の米国代表の発言は、核軍縮をめぐる国際環境の悪化を指摘するものでした。

トランプ政権は2月に公表した「核態勢見直し」(NPR)でCTBT批准を求めないとしました。従来のステップ・バイ・ステップのアプローチで最初に達成すべき措置がCTBTでした。米国が提起する新しいアプローチはステップ・バイ・ステップのアプローチに代替するものなのでしょうか?また、他のNWSもこれに同調するのでしょうか?NWS側の軍縮の取組み姿勢がどうなるのかに注目したいと思います。

(3)最後に日本です。日本は4月に公表された賢人会議の提言を作業文書37として提出しました。この提言では、上記にみられるような核軍縮における2つの潮流の対立が先鋭化している現状について、両者の橋渡しを行う措置を提案したものです。とりわけ橋渡しをする国(つまり日本)に対しては、誠実な対話の開始を求めており、なかでも「困難な問題」と思われるような議題を設定して共通の基盤づくりを目指すよう提言しています。その議題とは、核使用・威嚇の合法性を根拠づける自衛権の問題であり、核兵器のない世界を構想するにあたっての、国際の平和と安全の維持と人間の安全保障の両立性の問題です。これらの議題は、上記のように対立する双方の側から、どのように受け止められるでしょうか?日本の主張はこれに限定されているわけではありませんが、橋渡しの役割をどこまで果たせるかに注目したいと思います。なお、会議2日目には、河野外務大臣の演説と日本政府による賢人会議の提言をテーマにしたサイドイベントが予定されています。

 

文責:山田寿則(明治大学法学部)

 

【2020年NPT再検討会議・第2回準備委員会①】ICANキャンペイナーズ・ミーティングが開催されました

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キャンペイナーズ・ミーティングの様子

4月23日から開催される2020年NPT再検討会議・第2回準備委員会に先立ち4月21日(土)午前10時より、ジュネーブの会議施設であるLa Pastraleで、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)主催によるキャンペイナーズ・ミーティングの第1日が行われました。会場には、世界各地から100名あまりのICANのキャンペイナーが集いました。

開会の全体会では、ベアトリス・フィンICAN事務局長が登壇。昨年の核兵器禁止条約の採択以降、早期発効を目指すキャンペーンは効果的に行われており、これまで大きな成果を得ることができたことを誇りに思う、と述べました。

続いて、今回の会議を共催するノーベル平和賞受賞団体の国際平和ビューロー(IPB)のライナー・ブラウン共同会長が挨拶。核兵器禁止条約が採択された今こそ、その意義をより多くの人々に普及させ、世界は変えられると訴え続けていこう、と呼びかけました。

英国のアクロニム研究所のレベッカ・ジョンソン所長からは、現在の朝鮮半島情勢に関連し、核兵器禁止条約がいかなる役割を果たしうるのかについて議論を深めていくことは、北東アジアの安全保障を考えていく上でも、同条約の普遍化を考えていく上でも、重要な意味を持つとの問題提起がありました。

引き続いてテーマ別の近況報告に移り、禁止条約の署名と批准の状況、人道イニシアチブ、核兵器への投資の禁止、デジタル技術によるキャンペーン、信仰団体(faith communities)による取り組みが報告されました。

午前中の全体会では質疑応答も行われ、キャンペーンを効果的に進めていくための観点から、様々な意見交換が行われました。フィン事務局長は、次の1000日間の取り組みとして、核兵器禁止条約の早期発効とともに、発効に必要な50カ国の批准のみならず、100カ国の批准を目指したいと述べました。

この質疑応答では、筆者も発言の機会を得ました。その際、核の傘という言葉が持つイメージが、核抑止の本質を覆い隠す役割を果たしていることを指摘。核抑止は、核兵器を使用することを前提としていることを分かりやすい言葉で人々に説明していくことが、とりわけ核兵器依存国における運動において重要だと述べました。

午後からは、核兵器保有国、核兵器依存国、禁止条約賛成国のカテゴリーの3つの分科会が行われ、それぞれ核兵器禁止条約の早期発効と普遍化を促すための具体的な取り組みについて議論されました。

筆者は、核兵器依存国における取り組みを議論する分科会に参加しました。そこでは、①議会(議員)に対する働きかけ、②核兵器廃絶運動とは異なる分野の運動との連携、③核兵器禁止条約に反対する立場からの議論への対応についての議論が行われました。

午後6時30分からは、ジュネーブ市長主催のレセプションがアリアナ美術館で行われました。

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レセプションの様子

 

21日(日)には、キャンペイナーズ・ミーティングの第2日が行われました。午後からは、人権と積極的義務、メディア戦略とメッセージ発信、デジタル・キャンペーンと各団体の運動における相互補強をテーマにした分科会が行われました。筆者にとって、人権と積極的義務に関する分科会の内容は、大変に興味深いものでした。

核兵器禁止条約には、国際人権法への言及があります(前文8項および第6条)。核兵器による攻撃に際し、最も関連性のある人権は生命への権利であり、そのほか非人間的かつ屈辱的な扱いの禁止や、居住の権利と財産権、そして核実験により生じる人権侵害もあります。

核兵器禁止条約と同じように武器貿易条約(2014年発効)にも、人権と関連する規定があります。すなわち同条約の第6条、第7条は、輸送される武器が虐殺、戦争犯罪、人道に対する罪に使用されるとの情報がある場合、または人権を侵害する決定的なリスクが存在する場合において、締約国の武器輸送を禁止しています。

全ての国の人権状況を普遍的に審査する枠組みである国連人権理事会の「普遍的・定期的レビュー」(UPR)を活用して、審査対象国に対し武器貿易条約への批准または加入を呼びかけた国があるという事例も紹介されました。

核兵器禁止条約は国際人権法に言及していますので、武器貿易条約の先例に照らし「普遍的・定期的レビュー」を活用して、禁止条約の署名、批准、履行を呼びかけることが可能になるのではないかという議論です。実際に2017年11月、第28回「普遍的・定期的レビュー」において、グアテマラが11カ国に対し、禁止条約の署名と批准を求めた事例がすでにあるようです。

こうしたアプローチが核兵器禁止条約にも応用できないかという点は、今後、議論していく意味があると考えました。

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キャンペイナーズ・ミーティングが行われたLa Pastrale

文責:河合公明(創価学会平和委員会事務局長)

 

2020年NPT再検討会議に向けた準備委員会が開催されます

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4月23日から5月4日までジュネーブにある国連ヨーロッパ本部で、

2020年NPT再検討会議・第2回準備委員会が開催されます。

NGO連絡会からは、11名が参加します。

準備委員会および関連イベントのレポートは、このブログで順次アップして参ります。

 

・準備委員会のタイムテーブルはこちら

・サイドイベントのタイムテーブルはこちら

 

日本の核軍縮・不拡散政策に対する要請と質問~外務省との意見交換会を行いました

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核兵器廃絶日本NGO連絡会は4月13日(金)外務省内にて、核兵器禁止条約への対応など核軍縮・不拡散政策に関し政府との意見交換を行いました。その際、NGO側からは11名(名簿はこちら)、外務省からは岡本三成外務大臣政務官と川崎方啓軍縮不拡散・科学部審議官、今西靖治軍備管理軍縮課長らが出席しました。

はじめに岡本政務官からご挨拶があり、続いてNGO連絡会の共同世話人である田中煕巳日本被団協代表委員と森瀧春子・核兵器廃絶をめざすヒロシマの会共同代表が冒頭発言をしました。そして両共同世話人が要請・質問書(全文はこちら)を岡本政務官に手渡しました。

意見交換開始後、まず、手交された要請・質問書の全項目に対し、川崎審議官が回答をしました。その後、同じく共同世話人である川崎哲ピースボート共同代表をはじめNGO側がさらに質問し、岡本政務官・川崎審議官・今西課長が回答をしました。岡本政務官は最後まで出席され、意見交換会は1時間強に及びました。

 

関連報道

・外務省ホームページ(2018.4.13)

核軍縮に関する外務省とNGOとの意見交換会の開催

・NHK(2018.4.13)

NPT締結国の会合を前に 被団協など条約参加求める

・朝日新聞(2018.4.13)

核兵器禁止条約への参加を要請 被爆者らが外務省に

・西日本新聞(2018.4.13)

「核禁止条約に署名を」 川崎哲氏ら政府に要請

・岩手日報(2018.4.13)

「核禁止条約に署名を」 川崎哲氏ら政府に要請

・InDepth News(2018.4.16)

Pressure Mounts on Japan to Join the Nuclear Ban Treaty

談話・声明など

日本反核法律家協会 大久保賢一事務局長

 

核軍縮「賢人会議」の提言が発表されました

20171128雉「莠コ莨??? (189)20171128日、広島での賢人会議とNGOの意見交換会

 

3月29日、「核軍縮の実質的な進展のための賢人会議」の提言が日本の河野太郎外務大臣に提出されました(詳しくはこちら)。

この「賢人会議」は、昨年5月に岸田文雄外務大臣(当時)が立ち上げを表明したもので、日本人6名を含む計16名の国際的な専門家らがメンバーとなり、昨年11月と本年3月に2回の会合を重ねました。座長は白石隆・日本貿易振興機構アジア経済研究所所長。

賢人会議の目的として、核軍縮に関して異なるアプローチを有する国々の間の信頼関係を再構築することが掲げられています。実質的には、核兵器禁止条約交渉に参加しなかった日本政府が、その代わりに、核兵器国やその同盟国と核兵器禁止条約に賛同する諸国の橋渡しを行いたいとの狙いがあると見られます。2020年核不拡散条約(NPT)再検討会議の準備委員会(今年は4月23日~5月4日)への提言を出すために作業してきました。

NGO関係者としては、核兵器廃絶日本NGO連絡会の共同世話人である朝長万左男・日赤長崎原爆病院名誉院長や平和首長会議の事務総長をつとめる小溝泰義・広島平和文化センター理事長が委員に入っています。また、11月に賢人会議が第一回会合を広島で開いた際には、賢人会議委員らと日本のNGOとの間で意見交換会が行われました。

 

賢人会議の提言はこちら

概要(日本語) http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000349263.pdf

全文(英語) http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000349264.pdf

 

談話・声明など

河野外務大臣 http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/danwa/page4_003883.html

山田寿則明治大学講師による覚書はこちら

大久保賢一弁護士・日本反核法律家協会事務局長による声明はこちら